性と愛の日本史


         


井原西鶴の男色ワールド

井原西鶴といえば「好色一代男」などを書いた江戸時代の人

この方、「男色大鑑(なんしょくおおかがみ)」という短編小説集を書いております
そのへんからちょこちょこっと江戸の男色ワールドを紹介していきましょう

そのまえに・・・・井原西鶴ってどんな人なの??
えー、大阪生まれで諸国を放浪し、俳諧師として活躍してました
で、41歳の時に「好色一代男」が大ブレイク!!
この時代の風俗や世相なんかを描写した「浮世草子」というジャンルを作り上げます
プライベートは不明なとこが多い人であります
どうやら3人の子供がいたらしいんですが、3人とも次々と死んでしまい、奥さんまでも死んでしまったようです
西鶴は52歳で死んでしまいました

そんな西鶴がおりなす、「西鶴ワールド」へいざ!!
あ、ちなみにココでは男色のみをピックアップしていきます


色はふたつの物あらそい

男色大鑑から最初のお話を紹介しましょう
最初のお話は「男色サイコー!!」がテーマw
神様の時代のお話から始まります
世の中には男の神様しかいなかったので、国常立尊(くにとこたちのみこと)は、日千麿尊(ひのちまろのみこと)が大好きでした
が、スサノオノミコトが稲田姫に手を出したからめんどっちいことに
いろんなとこから赤ちゃんの泣き声が聞こえ、みんなウンザリ
さらに口うるさい女がでしゃばってきたり

「あーあ、男色ならこんな心配もないのにさ」
そう思う神様達なのでした

第一巻のしょっぱなは、まず「いかに衆道が女道より優れているか!!いかにいいものか!!」というのを書きまくってます
長々と比較が続きます・・・
西鶴センセいわく 「若衆は針ありながら初梅にひとしく えならぬ匂ひふかし」だそうです
ちなみに女性のことは「花は咲きながら藤づるのねじれたるがごとし」
うーん・・・


この道いろはにほへと

人生に疲れて隠居した男の告白から始まります

さてさて、庵で一人淋しく暮らしていた男ですが、やっぱり一人寝は淋しい
「あーあ。誰でもいいから美少年が雨の日なんかに雨宿りしにこないかな」なんてモーソーしてみたり・・・

そんな淋しい一人暮らしでしたが、花見の時期になると色んな人がやってくる
毎日ドンチャン騒ぎがあるんだけど、ここで女性たちがだらしない態度ばっかとってる
「ったく!!着物をたくしあげふとももなんぞ見せおってからに!!女性てのはほんっとだらしない!」
と、怒りまくり

そんな文句タラタラの男でしたが、ヒマになってきたので近所の子供達に手習いを教えることに
生徒の中に篠原大吉と小野新之助という9歳の子供がいました
この二人めっちゃ仲良しで、さらに美少年になりそなオーラムンムン・・・・

で、大吉は新之助をやったら大切にしていて、、大吉がやらなきゃいけない当番の掃除とかもぜーーんぶ新之助がやったりしてました

ある時のこと、男が昼寝をしていると二人でなにやらコソコソ話
新之助 「大吉、こないだのとこまだ痛い??」と、おててをニギニギ
大吉 「ううん。全然大丈夫だよ」
新之助 「痛い思いさせちゃってゴメンね」
そしてこの様子を見ていた男は「うーん。二人ともさすがワシの弟子♪優しい子に育ったなぁ」と満足

数年後、この二人はメチャクチャ美少年に成長!!
もー惚れすぎて惚れすぎて、恋わずらいで死んじゃう人まで現れちゃうほど
80歳すぎのおじいちゃんまでもが骨抜きになり、「頼むから一度だけ」と懇願しちゃう

が、なんと新之助が14歳で死んでしまいました
大吉は大ショックで黒髪を切落として生きていくのでした
ちなみに手習いの先生だった男はどうなったのか??というと、よくわからんのですね〜
たぶん二人のことを思いつつ、まだ寂しく一人寝してることでしょう(笑)


垣の中は松楓 柳は腰付き

鹿児島県の田舎に玉之助というめっちゃ美少年がいました
こんな田舎にいるのはもったいないくらい!と、その美少年ぶりは噂に
そんな玉之助は奉公先を求めて江戸へ行くことに
そして殿様の小姓になることに成功し、会津へ行くのであります

玉之助は美少年+性格もいいのでお殿様のお気に入りに
が、ある日、蹴鞠をしている最中に倒れてしまったのです
半年ほど寝込みましたが何とか命拾いできた玉之助
で、見舞帳をチェックしていたところ、毎日3回もお見舞いに来てくれた人がいたことを知りました
その男の名前は「笹村千左衛門」という下っ端役人
どーやら玉之助のことが大好きだったんだけど、気持ちを伝えることができずにいたのでした

さてさて、玉之助は何度もお見舞いに来てくれた千左衛門の家へ行きました
千左衛門はドッキドキで下を向いたまんま
すると玉之助 「いっぱいお見舞いに来てくれてありがとね。でもあんなに来たってことは僕のこと好きなんでしょ?僕も嬉しかったよ。お礼に身を任せちゃってもいいけど?」と迫っちゃいます
千左衛門は真っ赤になっちゃいました

でもって・・・・・二人はついに契ってしまったのであります

がっ!二人の関係を知ったお殿様はカンカン!
「よくもオレッチの玉之助を〜!」と、閉門という処分をくだしちゃいました

それでも燃えてる二人はとまらない
こっそり文通をし、さらにお殿様に「切腹させてください」とお願い

さすがのお殿様も「かわいい玉之助が死んじゃうのはヤダ」ってことで、とうとう二人を許すことに
こーして二人のラブラブ街道は開けたのでありました〜


人の花散る疱瘡の山

こちらは男色大鑑からではなく、「懐硯」という小説の中から抜粋します

無常な世の中で、長い歳月を経た素晴らしい梅が咲いていたという舞台から始まります
その素晴らしい梅をみるために多くの人が押し寄せていました

そこへ若い家来を2.3人引き連れた「田舎で都をみるということわざの通り」の美少年が現れました
専九郎という浪人も梅を見に来ていたんですが、梅もそっちのけで、この美少年に心を奪われてしまいました
そしてその美少年の後をつけたのです

近所の人に聞くとその美少年は武蔵からきたお偉いさんの孫で左馬之丞ということがわかりました

さてさて専九郎はその日から恋心がつのるばかり
涙が川になっちゃうんじゃないか!というくらい深く思い悩む日々

そんな専九郎ですが、実は元結のプロ
その噂を聞いた左馬之丞の家臣が噂を聞いてやってきました
専九郎は話をしているうちに、左馬之丞の家臣ということがわかると、「頼むから会わせて!!」と必死にお願い
家臣はそこまで言うなら・・・と、手紙を預かりました

そのお手紙はものすごーく奥ゆかしいお手紙で、左馬之丞は「こんな可愛らしい手紙を書くなら会ってみてもいいかな」ということに
で、念願かなって専九郎は左馬之丞と契ることに成功したのであります

が、左馬之丞が病気になってしまいました
そして美しい顔に疱瘡が表れてしまい、ものすごいアバタ顔になってしまったのです
数日前までは超美少年だった左馬之丞の顔は、二目と見ることができないほど醜い顔になってしまいました
「こんな顔じゃ、もう専九郎に会うことはできない」
悲しんだ左馬之丞は、自分にそっくりの美少年を探しだしました
でもって、「あなたは専九郎のところにいきなさい。そして僕の代わりに奉公しなさい」と命令

ところが肝心の専九郎は左馬之丞にソックリな美少年に全く興味なし
それよりも左馬之丞に会えない淋しさでいっぱい
「あんな身代わりヤダ!!僕は左馬之丞じゃないとヤダ!」
左馬之丞は
「僕の顔は信じられないくらい醜くなってしまいました。会えば恋心も冷めてしまうと思います。だけど、それほど悩んでいるのなら一度会いましょう」

こうして二人は会うことになったのです

左馬之丞をみた専九郎は涙を流しました
「こんなにも姿が変わってしまったんですか。けど、それを恥じて身代わりの美少年を僕のところに召し使わせるという気持ちに、僕はますます貴方を好きになってしまいました」

そーいって、自らの顔に傷をつけたのです!!

こうして二人の恋仲はさらに深まっていったのでありました
このお話を聞いた人々は「このような男色の美談は例がない」といって感動したのでありました


傘持つても濡るる身

明石藩のサムライ・堀越左近が激しい雨にあいました
木の陰で雨宿りしていると、長坂小輪(こりん)という12.3歳の美少年がきて傘を貸してくれました
「なんで傘を持ってるのにささないの?」と疑問に思った左近
すると小輪は訳を話しました
「父親が死んでしまい、母と暮らしてます。母が傘の細工を覚え男の仕事をしてることを思えば、申し訳なくて傘がさせないのです」

感動した左近は、明石に帰りお殿様にこのことを話しました
お殿様は「すぐその者を連れてまいれ!」と言い、母と小輪を迎えることに

小輪を見たお殿様はめっちゃ気に入りました
なんといっても髪の毛は枝に止まってる鳴かないカラスのように黒く、目は芙蓉のようで、声はウグイスのよう。でもって気性は梅のように素直で、全体的に「遠山に初めて見る月のような趣」の少年だったからです

こーしてお殿様は小輪を寵愛しまくりました
寝ながら「お前のためなら死んじゃう!!」ってほどベタボレ
けど小輪は「威勢になびくことは衆道の誠じゃありませんし〜」とそっけない
さらに「ボクも命を賭けれるような兄分が欲しいです」なんて言っちゃいました
お殿様はムカっとしましたが、それでも小輪にベタボレなんで「お前は気が強いなぁ〜。そこがまたいいんだケド」状態なのでした

その後もお城の中で騒動があったりしますが、小輪がアレコレ活躍し、お殿様はますます小輪にベタボレ

そんな頃・・・惣八郎という少年が密かに小輪に恋焦がれていました
ラブレターを書いて思いを伝え、小輪と忍びあう仲に
お殿様の目を盗み、愛を育んでおりました

さてさて、12月の衣替えの時期のこと、小輪はつづらの中に惣八郎をいれ自分のお部屋へ
「恋は今こそ!!」と、みんなが寝静まっている中、「あの世まで一緒だよ」と抱擁

ここで声が聞こえたらしく、バレちゃいました!
でもって、惣八郎は逃げ出しました
追いかけようとするお殿様にすがりついた小輪
「ボクには何にも見えませんでした!」とごまかすも、他の家臣が「いいえ。あれは間違いなく忍び男です。ちゃーーーんと見ました!」
ということで、小輪は捕まってしまったのです
厳しく尋問されても「あの人は小輪に命をくれた人です。たとえ身を砕かれても白状しません!!」といって相手の名前を教えません

それから3日後

お殿様は見せしめにと刀をもち「小輪 最期」と言葉をかけました
すると小輪はにっこり笑うと「長い間 寵愛していただいた身です。もはや思い残すことはありません」
するとお殿様、なんと小輪の左手を切落としました
それでも小輪はにっこりと笑い「この手で兄分をさすりましたから、さぞかしお憎しみでしょう」
そしてくるりと背中を向けて「この後姿を見ておいてください。またと世にないであろう若衆ぶりを皆様見納めに」
といって、細い首を切落とされ死んでしまいました

人々は小輪の死を悲しみましたが、それと同時に
「おいおい、小輪が殺されたというのに、兄分が名乗り出ないってのはどうなのよ?そいつはサムライじゃなくて野良犬の生まれ変わりであろう」と、悪評わんさか

が、数日後のある晩のこと

時期をみていた惣八郎
小輪を切落としたサムライの両手が切落とし、殺したのです!
さらに小輪の母を首尾よく逃がし、惣八郎は小輪の墓の前で腹をかききって自害したのです
その腹には、一重の菱形のなかに三段の筋が
これは小輪の定紋だったのでした


編笠は重ねての恨み

蘭丸はお金持ちの家の12番目の子(末っ子だよ)として生まれたんですが、兄弟が全員死んでしまいました
「出家すれが罪からのがれらる」と言われ、蘭丸は12歳で叡山へ行くことに
一人残った蘭丸の立派な姿が早くみたいお父さん
「早く黒衣を着た姿を見たい」と言ってたんで、「早く出家したいよーー」とお願いするも、「15歳まではダメ」と断られてました
っていうか、師がかなり蘭丸を気に入ってたんで、手放したくないってのもあったんですけどね

叡山に入った蘭丸はひときわ美少年だったんで、みんなジロジロジロリン
けど、お父さんの期待に応えるために耐えてました

中でもネチネチと意地悪だったのが井関貞助
「おいおい〜。おまえには一体何人衆道相手がいるんだよ〜」
「ボクに何人も相手がいるっていうわけ?」
「はん。自分の胸に聞いてみろや」
「ボクが師の慰みになっているのは、本当の愛情じゃないよ。ボクが本当にスキな兄分は一人しかいないんだ。ボクは今でもその人のことが忘れられない」
と、蘭丸はちょっと泣いてみたりして、それを見た皆さんがオロオロしたり
そんな感じで過ごしておりました

さてさて、叡山の稚児若衆にはお気に入りの髪結い係りがいました
どーも荒くれ男の間に合わせヘアスタイルは気に入らなかったらしく、山を越えて京の三条橋にある床屋まで行ってました。
そこに白鷺の清八という若い男だった。
この人の髪結いは上手で、現代でいうとカリスマ美容師
でもって、生涯衆道というポリシーのお人
清八は大人気だったんだけど、蘭丸のことが大好きみたいで、蘭丸がくると行列に並ばせず一番にやってあげました
清八はめちゃくちゃ優しく蘭丸に接していたので、だんだん蘭丸も情がわいてきちゃいました
で、蘭丸と清八は契っちゃいました

そんなある日のこと、相変わらずネチネチと続いていた貞助のイジメにとうとうぶち切れちゃった蘭丸
「あいつをぶっ殺して、ボクも死んでやる!!」と決意
蘭丸は清八に心の中でサヨナラをし、刃物屋さんへ

清八はというと、様子のおかしい蘭丸に気がついており、こっそり後をつけてました
で、蘭丸が立ち寄ったのが刃物屋
「蘭丸に何があったんだ???」と、蘭丸を追いかける清八
が、慌てすぎて足をくじいてモタモタしちゃいました
追いかけてる最中も「他に好きな人ができちゃったのかなぁ?やだよ〜」と悶々

周囲が暗くなってきた頃、なんと「蘭丸が貞助を討って逃げた!!」というニュースが!
寺中がたいまつをつけ、早鐘をつき、日ごろから蘭丸にふられて恨みを持っていた荒法師たちが蘭丸を探し始めました。うーーコワい

そしてとうとう蘭丸は5.6.人の荒法師に捕らえられてしまいました
でもって、自害もさせずに取り巻いているだけ
そのときの会話は
「どうせ逃げられずに殺されるんだからさ!思い残すことはないだろ」
「いっつも全然相手にしてくれなくって冷たかったよな〜。いい機会だからいっちょ酒の肴にして飲もうぜ〜!」

いたぶりの始まりであります
男のイジメこわっっってな内容の原文ですよココは
とりあえず何人かが酒屋さんに行き、盃とお酒を持ってきました
でもって、蘭丸に盃を持たせ、口移しで酒を飲ませる
でもって、蘭丸のそで下に手を入れていじくったり、後ろ帯をほどいてなぶったり
蘭丸は左右の腕を押さえられてるのでされるがまま
もー散々な目にあってる蘭丸ですが、大人数なのでかなうわけなし
しかもみーんな蘭丸狙いだったんだけど、相手にされなかった荒法師ばっかなので蘭丸は歯を食いしばって涙を流すしかなかったのであります

がっ!!!

ここで清八登場!!

いたぶられてる蘭丸を見た清八は、頭に血が上り荒法師たちを斬って斬って斬りまくった!!

そして蘭丸を連れて逃げ、以後行方不明となったのであります

さてさて、定かではありませんが、3年ほどたった頃、修行層姿で尺八を奏でていた蘭丸を鎌倉の鶴岡八幡宮で見たという噂も出ました
幸せに暮らせてるといいですね




ココで紹介したのはちょこっとだけですが、男色大鑑には40ものストーリー(武家モノ・役者モノ)が繰り広げられております
興味がある人は是非読んでみてね








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