性と愛の日本史


         


妻君譲渡事件

明治末期から昭和初期まで活躍した小説家 谷崎潤一郎

この人をめぐる奇妙な三角関係を紹介しましょう!!

まず、潤一郎の奥さんは「千代」といいます
実は千代は潤一郎の恋人だった芸者「お初」の妹

潤一郎はお初にメロメロで「結婚してぇ」と何度もプロポーズしてたんだけど、お初の答えはいっつもNO
でもって、お初は「アタシのかわりに妹はどう?」ってことで、自分の妹を紹介
潤一郎は「妹ならお初と似てるからいいかも」ってことでOK

こーしてお初の妹・千代と潤一郎は大正四年に結婚したのであります

ところが!!千代は姉と全然性格が違って、めっちゃ家庭的な女性
家庭的な女性が苦手な潤一郎は千代のことにうーんざり
まったく口もきかない新婚生活が続きました

そんな頃、潤一郎と急速に仲良くなってきていた佐藤春夫がたびたび小田原にある潤一郎の家に遊びにやってきます
ちなみにこの時、潤一郎33歳 春夫は27歳

春夫は「なんだって潤一郎は、こんな可憐で献身的で美しい千代のことを嫌うんだろう??」とハテナ顔
で、同情がだんだんと愛情に変わってくるのであります

潤一郎はというと、なんと今度は千代の妹の三千子にベタボレ状態
潤一郎は三千子にのめりこみまくり、なんと三千子をモデルにした「痴人の愛」を書いちゃいます
ちなみに三千子は14歳
まだまだ子供なんですが、潤一郎は三千子の自由奔放な態度に魅かれまくって、自分で三千子を自分のタイプに教育していきます
詳しくは痴人の愛を是非読んでみてね

これには千代もショック
「なんで妹と・・・」ということになり、潤一郎に愛想をつかしはじめました

ここに出てきたのが春夫
千代を慰め、潤一郎のことを責めまくりました

すると潤一郎が
「春夫、おまえ千代のことが好きなんだろ?じゃあ千代をもらってくれないか?」と言って来たのであります
春夫は千代が好きだったのでOKですが、千代はなかなか決心がつかない
こーして三角関係は2年ほど続きました

が、だんだんと春夫の愛を受け入れ始めた千代
だんだんと以前にない妖しげな魅力が出てくるようになりました

さてさて、その頃潤一郎は三千子と一緒に鎌倉に住んでおりました
久々に小田原の家に帰ると、千代がびっくりするくらい妖艶な女性になってました

「うわぁ。色っぽい女になってきたなぁ。なんか春夫にあげるのが惜しくなってきちゃったよ」
ってことで、モーレツに千代を手放すのが惜しくなってきちゃいました

そんな潤一郎の様子をみて三千子は「ばっかじゃない」とさっさと潤一郎のもとを去っていきました
三千子がさっさと出てっちゃったので余計淋しくなった潤一郎は、春夫に「お前にはもう用はないから、さっさと俺の前から消えてくれ」と宣言

春夫はめっちゃくちゃ怒りましたが、潤一郎はしらんーーんぷり
「だって元々俺の奥さんだし」

春夫は千代のことをすっごい大事にしてたんで、自分から積極的に攻めず、千代が心を開くのを待ってたんだけど、そんなゆったりとした二人の関係のとこへ潤一郎がやったら優しくなってきちゃったもんだから、千代も次第に潤一郎に心を開くようになってきちゃったんですねぇ
驚いたことにこの数年の間春夫と千代はプラトニック
ほんっと純愛を貫いてきたのであります

で、千代は春夫に「許してください。私があなたを知らなければよかったんです」というトドメのセリフを言っちゃいました

春夫の絶望はもう、すごいもんでした
そりゃそうですよねぇ〜

友人の言葉を借りれば「春夫が大事に大事にして愛をはぐくんできたのに、、潤一郎が手のひらを返したように我が物にしちゃった」

春夫はもうこの絶望や悲哀を詩にするしかなく、次々と愛の詩を詠んでいったのであります
これが有名な「秋刀魚の歌」
内容を簡単に説明すると、
「千代のことを思ってなきながら秋刀魚を食べてみます。千代が抱かれることを想像するだけで身も心も震えるほど苦しいのです」


春夫は自暴自棄となり、適当な結婚をしました
妻は自堕落な女性で、まったく結婚生活はうまくいきませんでした

潤一郎はというと、春夫の詩を詠んで少々申し訳ない気持ちに
この詩を千代の目にふれないようにしておりました


それから六年後

あることがきっかけで谷崎夫妻と春夫が再会
すると、やっぱり春夫と千代は惹かれあってしまいました

それを見た潤一郎は、「この二人の愛は必然的・運命的なものなのかもしれない」と考え出すように

こうして潤一郎は千代と別れる決心をしたのです

昭和4年8月のこと
潤一郎は友人やマスコミに手紙を送りました
そこには「千代と離婚し春夫と結婚する」と書かれてあり、「妻君譲渡事件」として世の中をビックリさせたのであります

こうして春夫と千代はめでたく結婚
幸せにくらすこととなったのでした
うーん。よかったですね〜


では潤一郎は??というと・・・・

こっから先もこの人は女性関係で問題を起こしまくります
コレを読んでる方は気になるでしょうからチャチャっと説明しますね

実は千代と別れたすぐ後にある女性と結婚
が、ここで潤一郎「神のような高貴な女性」に出会っちゃいます
それが根津松子
松子もお金持ちで、だんなも大富豪なんだけど、このダンナさんがかなりの遊び人
芸術家のパトロンをすることを好んでて、そのあたりで知り合ったようです

さてさて、そんな松子にほれまくった潤一郎
なんと松子の家の隣にいきなり引越し
お互い結婚相手がいる身でありますが、そんなことおかまいなし
潤一郎はさっさと奥さんと離婚し、松子もダンナと離婚

そして念願かなって「神のような高貴な女性」である松子とゴールインできたのでした〜











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