おばあちゃんインタビュー
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・・・・とある日、おばあちゃんとお話をしました
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ハガクレ
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ねーねー、おばーちゃんって戦争真っ只中にいたんだよねー?戦争ってどうなの?
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おばーちゃん
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あんたねぇ、戦争ってどうなの?って、そんな簡単に言わないでくれる?すっごく大変な時代だったんだから。
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ハガクレ
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へー。教えてよ。どんな感じだったの?
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おばーちゃん
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簡単に説明できるもんじゃないわね。長くなるけど話してあげようか
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ハガクレ
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うん。教えて
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おばーちゃん
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まずね、おばーちゃんは長野で長女として生まれたのよ。で、家は本家だったからそこそこ裕福でね。茨城の尋常高等小学校に行かせて貰ったの
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ハガクレ
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へー。小学校から親元離れたんだ
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おばーちゃん
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高校もね、高等学校に行かせてもらえたのよ
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ハガクレ
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ふーん。でもさ、高等学校ってすごいの?えらいの?
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おばーちゃん
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まぁエライというか・・・。あの時代、女の子で高等学校に行かせてもらえるだけで御の字だからね
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ハガクレ
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へー。変なの。別に男だろうが女だろうが学校行きたきゃ行けばいいじゃんねー
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おばーちゃん
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そんな時代じゃないのよ。
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ハガクレ
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ふーん。でもその高等学校ってどんな勉強するの?
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おばーちゃん
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日本の国が狭かったから、満州に移住するための学校みたいなもんだわね
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ハガクレ
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ええっ!満州!なんか満州って聞くと、アレを思い出すね。えーっとなんだっけ・・・・。学校で習ったんだけどな
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おばーちゃん
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満州事変のこと?
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ハガクレ
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そうそう!それそれ!
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おばーちゃん
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おばあちゃんもね、満州事変は小学校くらいの時に起きたからあまりわかってないんだけどね、日本はね、色んな国を攻めてたのよ。物心ついた頃から日露戦争だなんだと、日本はだんだんと「戦争」に向かって歩いていったわね。
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ハガクレ
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ふーん。でもさ、日本って悪いの?他の国とか攻めてさ、人いっぱい殺したんでしょ?
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おばーちゃん
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まぁねえ。おばあちゃんもよくわかんないけど、確かに色んな国を攻めてたみたいだねえ。でも昔は日本に限らずいろんな国がそんな感じだったからね
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ハガクレ
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ふーん。さっきの話しの続きだけどさ、高校行ってどうなったの?
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おばーちゃん
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高校行ってる時に縁談の話しが持ち上がったの
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ハガクレ
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縁談!?それっておじいちゃんとの?
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おばーちゃん
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違うわよ。別の人。親が縁談を持ってきてね。うちは本家で、相手は分家の息子さん。だけどね、おばあちゃんまだ結婚したくなくてねぇ。そんなときにね、愛知県の豊川工商というところでね、女工を募集してたの。そこにおばあちゃんは志願したのよ
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ハガクレ
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そうなんだぁ。でもその豊川工商って何するトコ?
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おばーちゃん
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鉄砲の弾薬を作ったりしてたわねぇ
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ハガクレ
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鉄砲の弾!すんごいねぇ!!
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おばーちゃん
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だって、結婚したくなかったんだもの。でもね、豊川工商で働いてるときに、あんたのおじいちゃんとの縁談話が持ち上がったのよ
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ハガクレ
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縁談だらけだね。
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おばーちゃん
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その時はね、なんとなく縁談を受けちゃってね、あんたのおじいちゃんと結婚することにしたの
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ハガクレ
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あのさぁ、結婚することにしたとか言うけど、そんな簡単なモンなの?ちなみに会ったことあるの?
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おばーちゃん
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一度もないわよー
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ハガクレ
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エー!一回も会ったことない人と結婚!?そんなのヤダー!もし相手が嫌なやつとかだったらどーすんの?
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おばーちゃん
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ねー?どうするんだろうね?
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ハガクレ
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ねーって・・・。そんなもんかぁ?
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おばーちゃん
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まぁ、昔は親が決めた相手と結婚するのが当たり前だったからね。おばあちゃんね、1回目は断ったから、2回目は断れなくてねぇ
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ハガクレ
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で、結婚することにしちゃったんだ?
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おばーちゃん
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そう。でもいいおじいちゃんだったでしょ?
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ハガクレ
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まぁねー
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おばーちゃん
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そのね、豊川工商はね、結婚しないと辞めれないの。でね、おじいちゃんが東京の浅草に住んでたから、おばあちゃんは浅草に行くことになったの
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ハガクレ
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ふーん
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おばーちゃん
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そしたらね、その豊川工商がね、空襲にあって働いてた人が何千にも殺されちゃったのよ
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ハガクレ
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ええっ!!!そうなの!!!???それってすごくない??
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おばーちゃん
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すごいわよ。おばあちゃんそのことを聞いた時ビックリしちゃってね。あの時縁談を断ってあのまま働き続けてたら死んでたわよ。あんたも生まれてなかったわね。
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ハガクレ
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うわぁ・・・。すごいね。
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おばーちゃん
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おじいちゃんは、アタシの命の恩人なのよ
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ハガクレ
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ほんとだねぇ
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おばーちゃん
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でね、浅草に引っ越したんだけどね、そのうちおじいちゃんの働いてた会社が軍事工場になっちゃったのよー
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ハガクレ
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へー
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おばーちゃん
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その頃におじいちゃんの親戚が「神田に貸家6軒ほどあるんだけど、そっちの管理をしてくれないか?」っておばあちゃんに言って来たの。
親戚の方も手が足りなかったらしくてね、そのうちの1軒を貸してあげるから、管理をお願いされてね、浅草から神田の駅前に引っ越したのよ。
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ハガクレ
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ふーん。でもさ、東京って空襲とかあったんじゃないの?おばあちゃん見たことある?
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おばーちゃん
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当たり前じゃないの!はじめて空襲をみたのは有楽町に行った時ね。寒いから炭を拾いに電車に乗って行ったのよ。そしたら突然ね、サイレンが鳴って「空襲警報だー!」とみんなが突然走り出してね。電車も止まっちゃうし、ビックリしたわよ。
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ハガクレ
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大丈夫だったの?
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おばーちゃん
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何とかね。ビックリしたわよ!すごい音なのよあれ。
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ハガクレ
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ふーん
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おばーちゃん
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一番ひどかったのは、2月くらいだったかしらね。神田の家でのんびりしてたら突然空襲警報が鳴ってね
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ハガクレ
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へー
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おばーちゃん
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おばあちゃんその時妊娠してたのよ。ちなみにアンタのお母さんがおなかにいたのよ。身重だから動けなくってとりあえず家にいたら、なんかまわりが燃えちゃってたのよ
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ハガクレ
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えっ!逃げなよ!
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おばーちゃん
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さすがに逃げなきゃ焼死しちゃうなと思って逃げたわ。家のまわりには人っ子一人いなかったわねー
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ハガクレ
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どこに逃げたの?
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おばーちゃん
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近くにある小学校に逃げたの。逃げる途中、すごかったわよ。ちょうどあの日はミゾレが降っててね。足元はぐちゃぐちゃだわ、バタバタと人が倒れてるわ。焼夷弾なんて見たことないでしょ?
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ハガクレ
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あるわけないじゃん!
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おばーちゃん
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あれ、すごく綺麗なのよー。なんかヒラヒラーっと炎が爆弾にくっついててね
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ハガクレ
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よくそんな余裕あるね
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おばーちゃん
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もう死ぬのを覚悟したからね。でもあんた、死ぬだろうなって時は肝が据わるもんよ?焼夷弾眺めちゃったからね
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ハガクレ
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はぁー。でも小学校まで逃げたんでしょ?
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おばーちゃん
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とりあえず小学校の中に入ったんだけどね、みんなが「ここも焼けちゃうから他のトコに逃げろ!」って言い出したの。
でもおばあちゃん身重じゃない?もう疲れちゃうわおなかは重いわで、もういいやって思っちゃったの。
皆逃げて行って、残ったのは怪我で動けない人達とか20人くらいだったわね。みんなで固まってね、死ぬのを覚悟したのよ。
だって、すぐそこまでパリパリと焼夷弾が落ちてるんだもの。そのときに、焼夷弾をゆっくりと眺めたのよ。
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ハガクレ
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へぇー
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おばーちゃん
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爆撃で窓がパンパンと割れてね。みんなでびっくりしちゃったわよ。そしたらね・・・
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ハガクレ
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そしたら?
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おばーちゃん
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なんだか風向きが変わったらしくってね、炎が別方向に行っちゃってね。おかげで焼死せずにすんだのよ。そこにいた20人くらいの人たちとホッとしたわぁ
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ハガクレ
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なんかいつも死にそうだね
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おばーちゃん
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そうよー。死はいっつも隣り合わせだったのよ。火事だらけで2日くらい家に帰れなくてね、落ち着いてきたので家に帰ろうと歩いてたらビックリよ。全部焼けちゃっててね。神田から上野まで見渡せたわ。帰る途中、死んでる人がいっぱいいてね。死体がその辺にほっぽらかしてあったわ
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ハガクレ
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うわぁ。怖いとか思わなかったの?
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おばーちゃん
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全く。死体を見て恐ろしいなんて思わなかったわよ。自分だっていつ死んでたかわからないし、みんな生きるのに精一杯だったからね
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ハガクレ
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おじいちゃんと会えたの?
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おばーちゃん
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家に帰ったら、全焼した家のトコにおじいちゃんの手紙が置いてあってね。おじいちゃん、私が妊娠中だったから心配したみたいよ
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ハガクレ
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当たり前だよ!
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おばーちゃん
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おじいちゃんとも会えたんだけどね、おじいちゃんもここまで来る途中、みんな防空壕に頭を突っ込んで、足をあげて死んでたよ・・・・って話してくれたわ。
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ハガクレ
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ふーん・・・。すごいことだね。ほんとに
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おばーちゃん
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神田の家が焼けちゃったから住むところが無くなっちゃったので、おじいちゃんの実家のある神奈川県の葉山に引っ越すことになったのよ
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ハガクレ
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へー。
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おばーちゃん
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おじいちゃんは次男なんだけどね、長男が戦争で死んじゃってね。南方洋上で輸送船に乗ってたんだけど撃沈されちゃったみたいなの。写真でみたけど、サーベルもってヒゲはやしててすごい写真だったわよ。
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ハガクレ
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ふぅん。じゃあおばあちゃんたちは葉山に移ったんだ
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おばーちゃん
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そうよ。でも、葉山に行く前に一度すごいのを見たことあるわー。
今の日比谷公会堂でね、撃墜させたB-29を展示してたの。そこに外人の模型があってね、おばあちゃんビックリよ!「なんだこの恐ろしい人間は!」と思っちゃった。だって頭の色は金髪で目が青くて、体がすっごく大きいのよ
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ハガクレ
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そんなの当たり前じゃん
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おばーちゃん
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今は慣れてるけど、初めて「外人」を見たらビックリするわよ!これが外人か・・・と、見に来た人みんな驚いてたんだから
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ハガクレ
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そんなもんかー。まぁ初めてだからね
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おばーちゃん
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そうよー。でもね、おばあちゃん、葉山に行ってから毎日外人を見ることになったのよ
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ハガクレ
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へー。何で?
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おばーちゃん
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その話はあとでね。その前に葉山に移ってからのことを話すわね。葉山にいたときも横浜大空襲や平塚に空襲があってね、横浜の空襲の時は葉山からも空が真っ赤になってるのが見えたわよ
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ハガクレ
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すごいね・・・
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おばーちゃん
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今みたいにテレビがなくてラジオだけだから、ラジオを通していろんなニュースが入ってきたんだけどね、どっかで原爆が落ちただのなんだの言ってるわけ。
でもね、日本は頑張ってる!日本は勝ってる!と言ってるわけ。
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ハガクレ
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ホントは日本ボロボロだったんでしょう?
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おばーちゃん
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そうねぇ。もう体力がなかったんじゃないのかなぁ?でも、ラジオではそんなことヒトコトも言ってないわよ。日本は勝ってますみたいなことばっかだったからねぇ
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ハガクレ
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じゃあ敗戦を聞いた時は驚いた?
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おばーちゃん
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えらいことになったと思ったわねぇ。だって負けるなんて思ってなかったんだもの。でもね、負けて悔しいというより、あー・・・終わったんだー・・・。良かった・・・と思ったのも事実だわね。
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ハガクレ
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やっぱそうだよね。
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おばーちゃん
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でもおばあちゃんね、次の日ビックリしたのよ!
朝、葉山の海を見たら、海一面に軍艦がいたのよ!大きな軍艦が、ずらーーーーーっと並んでてね、
もし戦争が終わってなかったらあの軍艦がいっきに攻めてくるのかと思ったらぞっとしたわね。
忘れられない光景だわよ。アレは。
なんだこれは!ってみんな大騒ぎでね。あんな軍艦があるアメリカに日本も負けるわけだと思ったわよ
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ハガクレ
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なるほどぉ
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おばーちゃん
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負けてからは大変だったわよー!食べ物がなくなっちゃってね。おじいちゃんの長男が死んだでしょ?その子供達も家で引き取ってね、毎日海で拾ってきた海草を食べてたわよ。子供が泣いちゃってねー。こんなご飯食べたくないってね。そりゃそうよねー。オホホホ
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ハガクレ
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何笑ってんのさー
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おばーちゃん
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だって海草ご飯よ?オホホ。
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ハガクレ
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ある意味、ヘルシーでいいじゃん
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おばーちゃん
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ねぇ?オホホ
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ハガクレ
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でも、いつまでその食べ物無し生活続いたの?
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おばーちゃん
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けっこう続いたわよー。闇市とかにも買出しに行ったしね。おもしろかったわよぉー。
この時におばあちゃんね、逗子の先にある池子の弾薬庫にお仕事しに行ったの。外人さんが占領したところなの。
そこで草むしりのお仕事をしたのよ。初めて間近で外人を見たわー
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ハガクレ
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ふーん。すごいとこで仕事してるねー。外人からお給料貰うなんて非国民じゃん
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おばーちゃん
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そんなこと言ってられないわよー。だってお給料が20日間で2万2500円よー?4時には帰らせてもらえるし、当時にしては破格中の破格のお給料だったんだから!
あんたのお母さん達のミルク代を稼がなきゃなんないじゃない
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ハガクレ
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まぁ確かにそうだよね。でも怖くなかったの?
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おばーちゃん
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全然。おばーちゃん外人にもてたのよー。オホホ。とりあえずハローハロー言っておいたわ。
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ハガクレ
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なんじゃそりゃ
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おばーちゃん
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でもねー、その頃から「パンパン」って呼ばれる女性が増えたわねー。真っ赤な髪の毛して派手な格好して外人の腕にぶら下がってたのよねー。
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ハガクレ
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パンパン?すごい言葉だねそりゃ
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おばーちゃん
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みんな軽蔑してたけど、あれだって生きてくのに仕方ないことじゃないかしらねー。
日本人が貧乏なんだもの。外人相手に商売しなきゃね。ま、パンパンの出現によって日本の女性はだんだん強くなってきたわねー。それに、あの女性たちがいなければ、一般の女性はとても怖い思いをしたと思うわ・・・・
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ハガクレ
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ほー
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おばーちゃん
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でもあんた達は幸せよー。女が男に意見を言えるんだもの。おばあちゃんの頃は、何か言うとまわりが「嫁のくせに生意気なこというな」って言われたからね。
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ハガクレ
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なにそれ?だって嫁の意見が正しいことだってあるじゃん
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おばーちゃん
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だけどダメなの。正しかろうが何だろうが「妻」が「夫」に逆らったりとか、とにかく「女」が「男」より上の立場になることは許されなかったんだから。女は三歩下がってなきゃいけないのよ
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ハガクレ
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えー!絶対イヤ!アタシだったら三歩前を行ってやる!
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おばーちゃん
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今の子はみんなそうね。
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ハガクレ
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アタシ、その時代に生まれなくってよかった。村八分にされてたかも
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おばーちゃん
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アンタだけじゃなく、今の子はみんな村八分よ。そしたら村から女性がいなくなっちゃうわね。ホホホ
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ハガクレ
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村八分仲間と楽しく暮らすわ。
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おばーちゃん
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それもいいかもね。ホホホ
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最後におばあちゃんに教えてもらったスゴイ歌を紹介
銃後の母
1 心置きなく 国のため
名誉の戦死を頼むぞと
涙も見せずに励まして
わが子を送る 朝の駅
2 散れよ 若きの桜花
男と生まれ戦場に
銃剣とるのも 君のため
日本男児の本懐ぞ
3 生きて帰ると思うなよ
白木の箱が届いたら
でかしたわが子 天晴れと
お前の母は褒めてやる
4 強く雄々しく軍国の
銃後を守る母じゃもの
女の身とて軍国の
忠義の二字に かわりゃせぬ
すごくないですか?
本当に自分の子が死んで、天晴れと思いますかね。
自分の子の骨が白い箱に入って帰ってきたら
めちゃくちゃ悲しくないですか!?
それを「国のためによく頑張った!でかしたぞ!」と
言わなきゃいけない時代って、すごいですよね
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